不動産投資のスタートを決意すると、
日々いろいろな物件を見ていくことになる。
一日に1物件、2物件と見ていくと
10個に一つくらいは「ちゃんと電卓を叩こう!」というものに巡り合う。
シミュレーションを叩くのだが、ここで
「この物件は融資期間はどれくらい取れるのか?」がわからないと
シミュレーションを叩くにたたけない。
金融機関はどのように融資年数を決定しているのか?
基本は、法定耐用年数以内
金融機関の融資期間は、
基本的には法定耐用年数以内で実行されることが多い。
法定耐用年数とは?
法定耐用年数は、機械や設備といった減価償却資産の
法定上の使用可能な見積期間のことをいいます。個々の機械はその耐用年数を正確に見積もることが困難であるため、
税法では各種の減価償却資産を分類して耐用年数が定めており、
その耐用年数に従って減価償却
(=その物の価値を年数とともに減少させていくこと)をしなければいけません。
会計や税務などが絡むため、
説明が難しくなるケースが多いが、
「法で決まっている、建物の価値がある年数」と捉えている。
金融機関は、それぞれの構造で決まっている
耐用年数の範囲内でしか融資をしない。
各構造の法定耐用年数は?
では、それぞれどの構造が何年の法定耐用年数なのか。
木造(Wood)
木造は、22年が法定耐用年数。
新築時価格は、200,000円。
新築時点で22年のため、最長が22年になる。
素直に考えるとそうなるが、
中には新築木造物件だと30年、35年と融資を出すケースも有る。
劣化対策等級を取得していると、
融資期間が延びることがある。
日々マイソクを見ていると、
「劣化対策等級2級取得(あるいは3級)」という文字を見かけないだろうか。
これは、簡単に説明すると、
「建物を長持ちさせるための対策をどの程度講じているか?」の指標。
劣化対策等級(レッカタイサクトウキュウ)の意味・解説
劣化対策等級とは、住宅性能表示制度による建物の「評価項目」のひとつ。
住宅を長持ちさせるための対策の程度を、3段階の等級で評価する。「等級1」は、建築基準法が定める対策が講じられている場合。
「等級2」は、通常想定される自然条件および維持管理条件の下で2世代(50年~60年程度)まで長持ちするように対策が講じられている場合。
さらに、3世代(75年~90年程度)まで長持ちするように対策が講じられている場合、「等級3」と評価される。
お墨付きがついている物件であれば、
法定耐用年数を超えて、融資を受けることができる。
余談:実家は法定耐用年数超え物件
投資家として、日々物件を見ていると、
築25年や築30年の木造物件は「古!ぼろ!」と
先入観で思ってしまう。
が、先日実家に返った際に、ふと思ったのだが、
実家は法定耐用年数超過の木造物件だった。
正直、全然住める笑
今も両親が住んでいるので、当然といえば当然だが。
そう考えると、古い物件でも賃貸付も全然できるなーと、
変な方向から、自信が湧いてくる。
鉄骨(Steel)
鉄骨造は、34年が法定耐用年数。
新築時価格は、180,000円。
新築であれば、少なくとも30年。
場合によっては34年融資が組めるので、
CFを安定させることができる。
ただし、市場に出回る物件は、新しくても築10年、
多いのは築25年〜30年のため、
そうなると非常に融資期間が短くなってしまう。
注意が必要な軽量鉄骨
同じ「鉄骨造」でも、「重量鉄骨」と「軽量鉄骨」に分類することができる。
この違いは、使用する鉄骨の厚さ。
6mm未満であれば軽量鉄骨、
6mm以上であれば重量鉄骨に分類される。
実際には他にも様々な種類がある。
先程、「鉄骨造=34年の法定耐用年数」と記載したが、
これが軽量鉄骨だと、19年〜27年の法定耐用年数になる。
「ん、利回りがいいな!」と思うS物件は
大体軽量鉄骨な事が多い。
いい物件だ!とテンション上がって、
物件調査へ行った後気がついたりすると、
倍くらい疲れるので、気をつけたい。
(実体験)
鉄筋鉄骨コンクリート
(SRC:Steel Reinforced Concrete)
鉄筋コンクリート
(RC:Reinforced Concrete)
鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄筋コンクリートは、
47年が法定耐用年数。
新築時価格は、200,000円。
ちなみに、この二つの構造は名称が長いので、
鉄筋鉄骨コンクリート=SRC(エスアールシー)
鉄筋コンクリート=RC(アールシー)
と略して呼ぶことが多い。
また、「Reinforced Concrete」は普段は聞き慣れない名称だが、
直訳すると、「補強されたコンクリート」という意味。
RCとSRCの違いは、
RC造に鉄骨(Steel)が入っているものが、SRC。
3つの構造のなかでは、最も法定耐用年数が長いため、
残存年数が残っているケースが多い。
新築だと、35年の融資期間も狙うことができる。
ただし、残存がたっぷり残っている物件は利回りが低い事が多く、
(融資が長く引けると、CFは残りやすいため)
逆に利回りが高い物件は、残存が10年、ということもある。
(こうなると、多額の頭金を入れるか、法定耐用年数を超過しての融資を組まないと
どえらい赤字になる。)
なぜ、
法定耐用年数以内の融資しかしないのか?
日々、物件を探し、シミュレーションをしていると、
「あー、この物件であと5年とれたらなー!」
「利回りが良いから、融資引っ張れたら最高な物件なのになー!」
と思うことがよくある。
(一瞬脱線すると、その物件は融資がつかないから、
利回りが高くなっているわけだが)
なぜ、金融機関は法定耐用年数にこだわるのか?というと、
「融資の担保割れ」を嫌うからである。
極端にいうと、
「1億円貸して上げますよ。1億円持っていればね」
ということ。
これが、1億円借りたいのに、8,000万円しか持っていないと、
銀行としては「何かあったら2,000万円損するから、貸すのは無理」ということになる。
例えば、築20年の重量鉄骨物件に20年融資をしようと思うと、
6年間は、法的に価値がないものに融資をしていることになる。
だから、多くの金融機関は法定耐用年数以内の融資しか実行してくれない。
金融機関によって異なる
耐用年数の考え方
上記に、一般的な耐用年数を記載したが、
それぞれの金融期間によって設定している年数が異なる。
延びることはなく、短くなることがほとんど。
・W:20年
・S:30年
・RC:35年
の年数が多いように感じる。
それでなくとも耐用年数以内の融資期間だと厳しいのだが、
さらに短くされると、正直非常にきつい。
法定耐用年数を超過して融資を出してくれる
金融機関は?
ただし、中には独自の目線で
法定耐用年数耐用を超過して融資をしてくれる金融機関もある。
詳細なことは別記事で書くため、
ここでは触りだけ。
スルガ銀行
中古のRC造、S造の物件に
30年、35年の長期融資を出してくれる。
しかも、取扱エリアはほぼ全国と使い勝手は非常に良い。
しかし、その一方でイールドギャップを確保できない物件に
融資を組んでしまい、黒字経営できない不動作投資をしている人もいる。
これはスルガ銀行さんが悪いのではなく、物件の目利きが悪い。
西武信用金庫
東京都中野区に本店を構える信用金庫。
エリア内の物件であれば、
ER(Engineering Report)と言われる、
不動産鑑定士が作成したレポートを元に、
法定耐用年数を超過して、融資を組んでくれる。
得意な物件は、RC造、S造。
ただし、木造物件も22年の枠を超えて融資を組んでくれる。
オリックス銀行
東京都港区に本店を構えるノンバンク。
木造物件に相性がよく、
評価が取れる新築木造物件であれば、
35年の融資を組むことができる。
中古の木造物件についても、
収支が収支がプラスであれば、22年を超えて融資をつけることができる。
SBJ銀行
韓国系の金融機関。
完全に法定耐用年数を超過していると厳しいが
(築30年の木造物件など)
残存が残っている物件に対して、
15年、20年と融資を組むことはできる。
三井住友トラストローン&ファイナンス
こちらもノンバンク。
積算が取れる物件だと、法定耐用年数を超過して融資を組んでくれる。
また、共同担保を提供できると、
フルローンや、ちょっとオーバーも狙えるため、
抵当権がついてない物件を持っている人は、
積極的に開拓したい金融期間。
日本政策金融公庫
政府系金融機関。
積算が出ている物件だと相性が良い。
また、無担保の枠や、
若者、女性、高齢者に対しての優遇措置もあるため
条件にあう債務者だと資金調達しやすい。
物件エリアも全国どこでも取り扱い可能。
あすか信用組合
積算が取れる、築古の木造物件に
20年融資を組んだ実績あり。
積算が取れる、都内の築古物件などは相性が良い。
例外を前提としてはいけない
利回りだけに注目して、
融資の当てがないまま、融資期間を長期で計算している
投資家や、不動産会社さんを時々見かけるが、
これはやってはいけない。
そんな希望だけ追っていても、全く時間の無駄だからである。
上記に記載したような、融通がきく金融機関も有るが、
それはあくまで例外として認識しておく必要がある。
「あー、この物件、こうだったらいいなー」
と考えてワクワクする気持ちは非常にわかるが、
投資家であれば、結局決済をして、所有権移転をしないと、
意味がない。
空中戦で、シミュレーションを叩いているくらいであれば、
・指値交渉
・融資条件を聞き取りに行く
・別の物件を探す
など、生産的な行動を積み重ねていこう。
ぜひコメントお願いします!